【読みどころ・感想】辻村深月さん『傲慢と善良』

『冷たい校舎の時は止まる』『ツナグ』『かがみの孤城』など映像化された作品もたくさんある辻村深月さんが書く、この世の生き抜き方とは…

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『傲慢と善良』の概要

作品名傲慢と善良
作者つじむらみづき
出版社朝日新聞出版
発売日2019年3月30日
初出典「週刊朝日」
2017年3月3日号~
2018年2月16日号
文学賞など
(受賞またはノミネート)
第7回ブクログ大賞(小説部門)受賞
本書より引用

あらすじ

親の仕事を継いで輸入業をしている架(かける)には、付き合って2年になる彼女・真実(まみ)がいる。

プロポーズも済ませ、結婚式の準備もしていた矢先に突然真実が姿を決してしまう

必死に真実を探す架だが、そこには思いもよらない事実が…

人生を生きにくくしている、傲慢さ、善良さとは何なのか。

『傲慢と善良』の読みどころ

『傲慢と善良』の読みどころを2つ紹介します!
ネタバレを含む可能性があるので、伏線やネタバレを踏みたくない方はご遠慮くださいませm(_ _)m

1.真実を信じ続ける架の懸命な姿

真実がストーカーに誘拐されたのではないかと心配して、架は様々な手段で真実を探します。
しかし真実の手がかりはほとんど見つかりません

真実は誘拐されたと信じて疑わない架に、警察や架の女友達は「自分で失踪した可能性があるのでは?」と疑問を投げかけます。

それでも真実を信じ続けて真実の実家がある群馬と東京を行ったり来たりします。

真実が入会していた結婚相談所、そこから紹介された二人の男性、真実の姉など様々な手を尽くして真実を探し出そうとする架の一生懸命な姿が愛おしいです。

2.恋愛とは、結婚とは何か

架は真実が失踪してから自分が真実について知らないことが多すぎることに絶望します。

結婚をすると決めるほどの相手なのに、いざ探そうと思ったら何も知らない。
知り合う前の相手の人生の軌跡がわからない。

知ろうとしなかった自分の傲慢さに架は打ちひしがれます。

アプリで知り合った二人は、知り合うまでにお互いが結婚に対して苦労を重ねていて、「結婚とは何か?」という疑問にも触れられています。

架と真実がたどり着く答えはどこなのか。
時代や世間に弄ばれながら、苦悩する二人の姿はリアルで読み応えがあります。

『傲慢と善良』の感想

読んでいてとっても心にグサグサ突き刺さる物語でした。

誰にでも傲慢な部分があって、その傲慢さ故に物事が上手く進まない。
大事な物を見落としてしまいます。

この作品の始めのカギとなる結婚相談所の夫人の言葉がめちゃ素敵なので、少し紹介します。

「うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人」

「傲慢と善良」本文104Pより引用

自分を振り返ってみて、昔は自分がほしいものなんて見えてなかったと思います。
「結婚すればなんとかなる」って思っちゃってましたね。

結果、思ったんと違うー!ってなるんですけど(^-^;

結婚でも他の夢でも、欲しいものがちゃんとわかっていないと、手に入らないという教訓は胸に染みます。

「現代の結婚が上手くいかない理由は、『傲慢さと善良さ』にあるような気がするんです」

「傲慢と善良」本文110Pより引用

結構序盤に出てくる言葉なんですが、この物語の全てがここ詰まってると言っても過言じゃない言葉です。

善良という言葉はよくいい意味で使われますが、そうじゃない。

私自身が「いい人」であることが全てのように思ってた時期を思い出しました。
本の中で大部分は真実の善良さが書かれていますが、垣間見える傲慢さがよりリアルな心情を表していて、「女って怖いね」と思います(笑)

終盤で登場する神社のお婆さんの言うこともかなり素敵なのですが、それは本を読んで確かめてくださいませ(^_^)

まとめ

いかがでしたでしょうか?『傲慢と善良』の良さが伝わっていたら嬉しいです(^_^)ぜひ手にとって読んでみてくださいね♪

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