村上春樹さん『街とその不確かな壁』【感想】

約40年間、完成しなかった物語が、ついに明かされる。

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『街とその不確かな壁』の概要

作品名街とその不確かな壁
作者名村上春樹
出版社新潮社
発売日2023年4月10日
初出典書下ろし
文学賞など
『街とその不確かな壁』より引用

『街とその不確かな壁』のあらすじ

16歳の「きみ」が、17歳の「ぼく」にその街のことを教えてくれた。

ぼくたちはその夏に、その街について沢山のことを語り合った。
「きみ」は影で、本物の「きみ」はその街にいると言った。

「ぼく」は本当の「きみ」に出会うために、その街に行きたかった。

そして「ぼく」は気づいたらその壁の前にいた。
影を失った「ぼく」はその街で、本当の「きみ」に出会う。

『街とその不確かな壁』の読みどころ

『街とその不確かな壁』の読みどころを紹介します!
ネタバレを含む可能性がありますので、伏線やネタバレを踏みたくない方はご遠慮くださいませm(__)m

1.本体と影はどちらが本物なのか

「ぼく」が出会った17歳の「きみ」は、自分は影であると言います。
本当の自分は壁の内側にいると。

それから随分時間が経って「ぼく」がたどり着いた壁の中は、時計がない質素な世界。
「ぼく」は門衛に影を剝がされて壁の中に入ります。

そこで「ぼく」には、図書館で「夢読み」という仕事が与えられています。
影は門衛に世話をされ、仕事をさせられます。

本体の「ぼく」とは違う意見を持ち、別の体を持つ影。
壁の中と外を行き来する中で、本当の「ぼく」はどちらなのか。

2.いるべき世界はどこなのか

「ぼく」は壁の中に行きたいと望み、実際にその願いは叶います。
そして目の前にいる本当の「きみ」を見ながら、壁の外にいた「きみ」を思い出す。

壁の中で生きていくことを決めた次には、気づいたら壁の外に戻ってきています。
戻って来た「ぼく」は、今の自分の生活に違和感を覚え、仕事を辞めて、しばらく何もしない生活を送ります。

その中で壁の内側での出来事を思い出し、夢でなかったことを確認し、なぜ戻って来たのかに思いを巡らせます。

壁の内側にいれば外の世界を思い出し、外にいれば内側のことに思いを馳せる。

「ぼく」が選ぶのはどちらの世界なのか。

自分がいるべき場所さえも考えさせられるような、どれが現実でどれが非現実なのかわからなくなる展開に読む手が止まらなくなります♪

感想※ネタバレあり

村上春樹さんを読みなれていないので、あまり色々は言えませんが。

半年ほど前にやっと読めた『ノルウェイの森』と同じ何とも言えない場所に心を連れていかれる感じでした。
読み終わるまで仕事もおぼつかないくらい(笑)

多くの伏線と多くの解釈ができるのですが、難しいことを解説することはできないので、どなたか得意な方にお任せしようと思います。

・壁の内側が何を意味しているのか
・剝がされた影の意味は何なのか
・ぼくは何故、壁の外に意識を戻されたのか
・イエロー・サブマリンの少年は何を意味しているのか


読み終わっても解決しない事柄が山積みで、思考の海に溺れそうです。

壁の中と外は、パラレルワールドのようでもあり、それぞれの心の中のようでもあり、同時にそのどれもでない、みたいな不思議な世界です。

『ノルウェイの森』を読んだ後もそうでしたが、心に何か課題を与えられて、自分なりの答えを出しなさいと言われているような

抽象的な表現ばかりですが…この不思議な読後感が心地よいです。

何度も読んだらその答えが見つかるのか、見つからないのか。
もう一度読んで確かめてみようと思います(*^^*)

まとめ

いかがでしたでしょうか?
『街とその不確かな壁』の魅力が伝わっていると嬉しいです。

村上春樹さんが完成させるのに40年かかった超大作を、ぜひ手に取って読んでみてくださいね♪