重松清さん『はるか、ブレーメン』【感想】

『ビタミンF』、『流星ワゴン』の重松清さんが、人の死に際のついて、人生について書いた一冊。

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『はるか、ブレーメン』の概要

作品名はるか、ブレーメン
作者名重松清
出版社幻冬舎
ページ数421ページ
発売日2023年4月5日
初出典日本海新聞、大阪日日新聞、山口新聞、宮崎日日新聞、北國新聞、富山新聞、福島民報、新潟民報、大分合同新聞、デーリー東北、北羽新聞、福井新聞、沖縄タイムス、函館新聞、上毛新聞、山陽新聞、愛媛新聞、岩手日日新聞、釧路新聞に2021年8月~2013年3月の期間に順次掲載
文学賞など
『はるか、ブレーメン』より引用

『はるか、ブレーメン』のあらすじ

3歳で母親に捨てられた小川遥香は、広島の田舎で祖母と暮らしていた。
しかし祖母は他界し、古い家に一人で暮らすことになる。

ある時、ブレーメン・ツアーズという会社から、思い出巡りをしている客を泊まらせてほしいと連絡を受ける。

その会社は死ぬ間際に見る走馬灯を作るという不思議な仕事をしていた。

成り行きで一緒に付いてきた幼馴染のナンユウと共に、思い出巡りの手伝いをしていく中で、家族や遥香を捨てた母親へも思いを巡らせていく。

『はるか、ブレーメン』の読みどころ

『はるか、ブレーメン』の読みどころを紹介します!
ネタバレが含まれる可能性がありますので、伏線やネタバレを踏みたくない方はご遠慮くださいませm(__)m

1.自分捨てた母親とどう向き合うのか

遥香は自分でシングルマザーを選んだ母親に3歳で捨てられました。
写真では母親を見たことがあっても、実際の記憶は残っていません。

そして、自由奔放に生きてきて、今は生きているかすらわからない母親が、会いたいと言っていると連絡を受けます。

母親に会うか会わないかを悩む遥香。
他人の思い出が見える遥香は、母親の思い出に自分がいるのかどうか気になります。

遥香は母親に会うのか。
母親の思い出には遥香の思い出はあるのか。

何度も何度も悩む遥香の姿が愛おしいです。

2.悲しい記憶は必要なのか

ブレーメン・ツアーズでは、お客さんの望み通りに走馬灯に出てくる思い出を消すことができます
思い出は色付きと色なしがあって、走馬灯に描けるのは色付きの思い出だけです。

楽しい思い出も悲しい思い出も人によってそれぞれです。

走馬灯に出す思い出を自由に操作できるなら、悲しい思い出はいらないのではないか?

しかし、悲しい思い出を残すお客さんもいる。

悲しい思い出を残すのはなぜなのか。
人にとって思い出とはどんな意味があるのかを考えさせてくれます。

感想※ネタバレあり

いくら親子とはいえ、交流した記憶がないとなつかしむことが出来ない、というのが心に刺さりました。
言われたら当然と思えるんですけど。

遥香は3歳で母親と別れているので、ほとんど母親を覚えていないんですね。
育ててくれた祖父母が写真を見せてくれた程度で。

覚えていないことには気持ちを寄せることもできない。
初めていく旅行先の景色を懐かしいとは思わないのと一緒かもしれません。

そう思うと「思い出」というのは、人にとって、とっても大事なものが気がしてきます。

ブレーメン・ツアーズでは、建前の仕事として個人の願いを叶える旅行をコーディネートしていますが、走馬灯を描き替えるよりも大切な仕事なんだろうな~と思います。


もう一つ。
光子さんの思い出にいきなり不倫が登場したのは面白かったです(笑)
しかもその真相が段々と明らかになっていく。

走馬灯に不倫の思い出を残すかどうかを迫られた達哉さんの反応は、生死の境をさまよう母親を生かすかどうか決めかねているような反応でした。

息子自身として悲しい思いと母親に楽しかった思い出を残してあげたいという思い。

達哉さんは、不倫の思い出を残すことを決めましたが、それを許さず、家族だけの思い出を残してほしいと言う方もいるんだろうなと思います。


私が死ぬ時の走馬灯には何が見えるのか

読みながら考えてしまいましたが、辛く悲しい思いででも、自分の身になったと肯定できるおばあさんになりたいなぁと思った次第でした(*^^*)

まとめ

いかがでしたでしょうか?
『はるか、ブレーメン』の魅力が伝わっていたら嬉しいです(^_^)

生きてきた道のりと死に際を考えさせられるこの作品を、ぜひ手に取って読んでみてくださいね♪