【ネタバレ・感想】2023年本屋大賞ノミネート!小川哲さん「君のクイズ」

クイズとは知識の詰め込み競争ではない

クイズとはクイズに強い者のスポーツである

「問題です。クイズとは、何でしょう?」

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あらすじ

生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」に出場した三島玲央。

決勝戦の最終問題で対戦相手である本庄絆が、一文字を読まれない間に早押しボタンを押し正解してしまう

会場は騒然とし、放送後のSNSは批判と賞賛であふれかえる。

三島も他の出場者もヤラセだと疑う中、三島はなぜ本庄が最終問題を正解できたのかを調べ始める

一問一答では答えられない謎に揉まれながら、「クイズとは何か?」という真実に迫っていく。

印象に残った言葉7選

「君のクイズ」の中で印象に残ったセリフや言葉を紹介します!

前半はかなりクイズの説明的なことが多いので、競技クイズについて知らなかったことの印象的な場面をピックアップしています♪

この先は本のネタバレを含みます。話の結末や真相に繋がるネタに触れたくない方はご遠慮くださいませm(__)m

「美しい早押し」という美学

「Q-1グランプリ」の決勝の録画を見直している三島が、クイズの「確定ポイント」について語る場面です。

『美しい早押し』というのは、問題が確定した瞬間に押し、百パーセントの自信を持って正解を答えることだ

と三島は言っています。

クイズにも美学があって、キレイな正解の仕方が存在するんだ~と思いました!

ただのゲームだと思っていましたが、本当にスポーツに似ています

この「確定ポイント」がかわってクイズ番組を見ると、もっと面白いんだろうな~と思いました(*^^*)

この場面の問題で本庄は誤答をします。

日本一低い山を聞いている問題で、答えは日和山なのですが、天保山と回答してしまうんですね。

実は東日本大震災で地盤沈下が起きて、それまで一番低かった天保山から、日和山に変わってしまいました

三島は以前に同じ問題を回答していて、答えが変わっていくことを「クイズが生きている!」と感動しているのですが、そんな些細なことも記憶しているというのはすごいですね。

一つ一つの問題で本庄が押した場所、その時の問題を読んでいる人の口元、本庄がその問題の答えを推測できたかどうか、を三島は一つずつ検証していきます。

この細かい検証が、終盤で謎を解決することになるんです(*^^*)

「お前、みんなの前で間違えるのが恥ずかしいと思ってるだろ?」

三島が中学三年生の時に、高校二年生だったクイズ研究部の部長である高橋先輩が三島に言った言葉です。

  • 「恥ずかしい」という感情はクイズに勝つためには余計だ。そんな感情は捨てた方がいい
  • みんなが知っている問題も押し勝たないと勝てない

めちゃストイックじゃないですか?

記憶力がいいとか頭の回転が速い人が、知識をひけらかしたいだけでやってるんじゃないんですよね。

そう思ってクイズ番組を見ているわけじゃないですけど、こんなにスポーツ的でストイックだとは思っていなかったので、すごいな~と感心しちゃいました。

恥ずかしいという感情は余計、というのは、人生の他のことでもよく言われます。

聞くは一時の、聞かぬは一生の恥」とも言いますし。

どんなことでも極めるというのは、生半可なことじゃないですねっっ

「クイズに正解する時はかならず、問われている問題と過去の自分の経験が重なります。そうでないと、僕たちはクイズに答えることができません」

かなり真相に迫ってきました。

「Q-1グランプリ」の準決勝に出場した富塚が、本庄がヤラセをした証拠として「Qのすべて」というクイズ番組で同じ問題が出題されていたことを三島に知らせてきた場面です。

しかし、三島は自分も以前作問した問題や以前回答したことがある問題が出題されていたと反論します。

そして見出しのセリフを言います。

三島は、「クイズに正解する時、どういう根拠を持っているか」を考えて、根拠が全く見つからなければヤラセだと証明しようとしていたのです。

その答えを見たり聞いたりした経験がないと回答をすることができない。

当たり前ですが、クイズプレーヤーは魔法使いではない、ということです。

そして三島は、富塚から本庄が出演した番組「Qのすべて」で使用した問題の全問リストを受け取ります。

僕にとってクイズをすることの一番の魅力は、クイズが僕の人生を肯定してくれることにあった。

「Q-1グランプリ」でゲームに関する問題を回答した三島自身を振り返っている場面での独白です。

めちゃくちゃ深い言葉だなーと思いました。

三島は大学時代に出会った桐崎という刀剣乱舞のオタクである女性に出会い、付き合うことになります。

社会人になる時に同棲を始めて、結局は桐崎が「他人と暮らすのはストレスだ」と言って別れてしまいます。

そのショックで大会を欠席してしまう三島。

友人が三島を心配してアニメ、ゲーム限定のクイズ大会に誘います。

三島はしぶしぶ参加し、そこで桐崎に出会っていなければ答えれれなかった問題を正解します。

その問題に正解できたことで、三島は桐崎と出会ったことを肯定することができました

クイズプレーヤーはここまで自分の人生全てを使ってクイズをしているんですね。

こんな形で自分を肯定できるというのは、素敵なことだと思います(*^^*)

見知っただけのわずかな情報で偶像を作り、その偶像を崇める

心が痛い一言です(;’∀’)

確かに、テレビや動画に出ているたった数分や一言の投稿を見てその人を妄想して決めつけているなーと思いますっっ

この物語では、SNSでの投稿も随所に書かれています。

「Q-1グランプリ」が終わってから、本庄は音信不通になり誰とも連絡を取らずSNSへも登場しません。

他の出演者たちは、本庄の回答はヤラセだなどという抗議をしたりと盛り上がっている。

視聴者も本庄を称える者、三島も含めた出演者がグルでヤラセだったと推察する者もいた。

その中で、三島はほとんど何も発信しませんでした。

一度怒りに任せて引用リツイートをしましたが、翌朝には削除しています。

三島の態度を良く思った人たちが、三島のファンだと言いダイレクトメッセージを送ってくるようになります。

しかし、ファンだという人達の中で、三島は「小さいころからクイズのために生きてきて、そのために努力を惜しまなかったキャラクター」になっていて、

三島が発言したことのない言葉に感動したと感想を送ってくる人もいました。

それは三島が思う自分自身とはかけ離れていました。

三島が何も発言しなかったのは、本庄が失格になった場合に賞金の一千万円がもらえる可能性を考えたからで、

本庄のことも、始めは「グーグル検索窓の劣化版」としか思っていませんでした。

これは三島が心の中で思っていただけで、誰も知らない

誰も知らなければ、その考えはその人にはないと判断され、何も言わなければ周囲の勝手な想像が真実になってしまいます。

ただの個人で生きていれば、大きな損失になることは少ないですが、

有名になればなるほど、妄想する人数が増えていき、勝手な妄想同士でイザコザが起きたりもする

人間というのは、自分が見えるものだけで判断しがちだなと再確認させていただきました(*^^*)

っていうのはどうですか?「ママ、クリーニング小野寺よ」の真相についての話です。今の話、感動しましたか?

三島は「Qのすべて」の全問リストから、「Q-1グランプリ」の最終問題と全く同じ問題を見つけ、

録画ビデオから、最終問題を読み始めるアナウンサーの口が閉じていて、始めの言葉がある程度推測できたことを見つけ、

両方の番組の総合演出である坂本泰彦なら、生放送で盛り上がるように二人が答えられる問題を用意したと考えました。

そして、本庄は決勝戦の最中にそれに気が付いたため、最終問題が答えられたと推測します。

すぐに本庄に連絡し、直接会うことになりました。

三島は本庄に自分の推理を話し、本庄は一点だけ違うと言います。

本庄は、決勝戦の前から出演者に関係する問題が出されることをわかっていました。

そして、昔に不登校になった話や、「Qのすべて」で最終問題を同じ問題を正解した時、不登校だった時代の自分が肯定されたと思った、と語ります。

話に関心している三島に本庄は、

「っていうのはどうですか?「ママ、クリーニング小野寺よ」の真相についての話です。今の話、感動しましたか?」

と問いかけます。

私からも、「え?」と心の声が漏れてしまいました(;’∀’)

本庄が語った話は半分以上が作り話で真実ではなかったのです。

彼は自分がYouTubeに仕事を移すための準備として、「Q-1グランプリ」を利用したのでした。

問題が読まれていないうちに正解し、魔法のようだと世間に騒がれる。

人の注目が集まれば、SNSやYouTubeの登録者数もその分増えていきます。

本庄は、三島が思うような、クイズが好きで競技クイズをしている人ではなかったんですね。

すごい裏切りですが、現実世界ってそうよね…とも思ってしまいました。

好きでやっている人は全員が好きでやっていると錯覚してしまいがちです。

でも実際は、ビジネスだからやっているという人も一定数います。

どちらが本物というものではありませんが、ビジネスでやっている人に負けるというのは何とも言えない悔しい気持ちになっちゃいます(-_-;)

クイズとは人生である

三島が最後に導き出した、「クイズとは何か?」に対する答えです。

本庄というビジネスのためにクイズをする人に出会い、自分にとってクイズとは何かという問いを導き出したのです。

自分の知識と経験を全て使ってクイズをするクイズプレーヤー達は、かっこいいな~と思いました(*^^*)

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「君のクイズ」の魅力が伝わっていたら嬉しいです。

QuizKnockの動画もよく見ている私からしたら、クイズプレーヤーの努力や考えていることがわかってとても楽しかったです♪

ここには書ききれないクイズの奥深さを知りたい方は、ぜひ読んでみてくださいね(*^^*)