夫婦と親子と離婚。有川浩さん「キャロリング」

「不幸の比べっこなんてしてもしょうがないでしょ」

「おじさんは一生懸命生きた。天寿がここまでだった。ただそれだけよ。誰かと比べることじゃないの」

小説のためネタバレを含みます!それでも良いという方のみ続きを読んでください!

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物語の概要

この物語は、様々な親子関係を築いて生きてきた登場人物が

  • 他人と比べることの無意味さ
  • 親の人生と自分の人生は違うこと
  • 家族間での親子と夫婦の違い

に気づいて成長していくお話です。

では、どんなお話なのか登場人物からみていきましょう(*^^*)

登場人物

子供服メーカー「エンジェル・メーカー」

クリスマスで倒産が決定している。同じフロアで学童保育も行っている。

大和ー主人公。営業マン

英代ー社長。亡き夫の事業を引き継いだ。大和の母と幼馴染

柊子ー呑気で優しいデザイナー

ベンー肥えたタヌキのようなデザイナー。フリフリな服が大好き。

朝倉ー美人東大卒の僻み営業マン

航平の家族

航平ー学童保育に通いう小学生

圭子ー航平の母。バリキャリママ

祐二ー航平の父。冴えない会社員

あらすじ

大和には子どもの頃、父親にDVを受けていた過去がある。

母の幼馴染として子どもの頃から交流があったのが現在の上司である英代で、学生時代からバイトとして会社を手伝い、ベンの機転で「エンジェル・メーカー」に就職していた。

しかしその会社も主要取引先を失って倒産することになり、後一か月程に控えていた。

一方、航平は両親が別居中で母親と暮らしており、母親の都合で新年から海外へ転勤することが決定している。

本当は家族3人で暮らしたい航平は、何とか父親に会えないかと「お父さんに会いに行きたい」と柊子に話す。

柊子は航平の依頼を引き受け、父親のところまで一緒に行くこにとなるところから物語が展開していく。

夫婦と親子のつながりは違っていい

これより下はネタバレが含まれます!

私としては実体験も踏まえて一番心に刺さってきた(-_-;)

航平は両親が別居していて母親と一緒に暮らしているんですよね。
物語を書くのが好きで自分の境遇を元にした物語を書いてるんです。

そこに、
「あのとき、わたるが仲直りしてよとお願いしていたら、お父さんとお母さんは離婚しなかったかもしれません。」
って文があるんです。

自分の子どもにも同じ思いさせてたんだろうなって思って、胸がぐさーっと痛くなりましたっっ

うちの場合はたぶん、
「離婚しないでって言ったのに、お母さんは家を出て行ってしまいました」
って感じですが(-_-;)

でもね、物語の後半で「夫婦の関係」と「親子の関係」の違いを航平の両親はきちんと航平に伝えるんです。

これはぜひ本で読んでほしいところですが。

とっても潔くて、子どもを一人の人として扱っていて、私も子どもに対してこんなことが言える親になりたいって思います。

すっごく悲しいけれど、清々しい気持ちになれる、そんな感じです。

生まれ育ちと子どもの生き方

主人公に大きく関係する内容はこっちの方です(-_-;)

この物語には、3種類の家庭環境が登場します。

  • 大和のようにDVが日常的だった家庭
  • 航平のような夫婦が不仲な家庭

そして登場人物には記載していませんが、

  • 生まれがヤクザや貧困環境な家庭

みんなそれぞれ「自分が一番不幸だと思っている時」というのが描かれていて、
それをどうやって乗り越えていったのかというのが物語の根底にある面白さだと思っています。

一人ひとりどうだったか書きたい気もしますが、
でもぜひ読んでほしい!

物語はやっぱり始めから読んで感情を掴み取っていくのが面白いので。

精一杯気になるように書いて、皆さんにも本を読んでいただけるように努力します(笑)

キュンとしたセリフ(文)3選

1.「不幸の比べっこなんかしてもしょうがないでしょ」

これは、この物語の最大のテーマです。
英代が居なければ、この言葉を伝えてくれなければ、大和は両親を憎むところから這い上がることができなかった

この一言はぜひ前後の文も併せて感情を感じ取ってほしいですね~

2.もったいないという言葉が物ではなく相手の気持ちにかかる。俊介にはない文法だった。

こういう有川さんらしい言い回しが、好きなんです。


「図書館戦争」でもこんな言い回しがあるんですけど、人の気持ちを大事にする言葉の使い方がとっても素敵だと思っています。

本文を拝借させていただくと、「私の辞書にはない文法」です(笑)

3.「だけど、俺はもうずっと昔に終わったことだ。現在進行形でつらいほうがつらいだろ」

1の英代が言ったことに対する、大和なりの答えかなーって思っています。

昔の私なら読んでも実感わかなかった気がしますが、今ならわかるのは、自分の辛さを「ずっと昔に終わったこと」にできたからなのかなーとか思ったり。

なんか、こう、「比べても仕方ないけど」って前置きがあって、でも今辛いことは肯定してくれてる優しさが素敵ですね(^^)

おわりに

つらつら書きましたが、有川浩さんの「キャロリング」をまとめると、

  • 親子関係
  • 夫婦関係
  • 他人と自分を比べることの無意味さ

を書いた物語

登場人物それぞれの「親の乗り越え方」に注目!

面白いのでぜひ読んでみてくださーい!